どうも、フリーランスエンジニアのMakotoです。
今回は、Azureで登場するデータセンターに関する用語について解説します。
- ジオ(geo)
- リージョン
- リージョンペア
- 可用性ゾーン
- 可用性セット
- ソブリンリージョン
用語の意味と合わせて、リージョン選びのポイントや障害対策の違いについても解説します。ぜひ最後までお読みください。
それではいってみましょう!
サーバとデータセンター
業務用のサーバは一般的にメンテナンス性やセキュリティ保護の観点から「サーバラック」と呼ばれる収納スペースに設置されます。
一つのサーバラックの中にいくつものサーバが固定(ラッキング)され、電源やネットワークスイッチ(HUB)を共有するイメージです。
データセンターの中にはこれらサーバラックが多数並んでいます。美しい。。
データセンターのバーチャルツアーからMicrosoftのサーバルームなどを覗き見ることができます。データセンターを見学しているような雰囲気をリアルに味わえるので参考にしてください。
ジオとリージョン
Azureのデータセンターは、ジオやリージョンといった地理的な概念でグループ化されています。順番に見ていきましょう。
ジオ(geo)とは?
ジオ(geo)はほとんどの場合、国の名前を指します。
日本、中国、イギリスなどがジオに当たりますが、アジア太平洋、ヨーロッパなど複数の国にまたがるジオも存在します。
ジオは次に説明する「リージョン」をグループ化したものです。AZ-900ではジオの意味を問われる可能性は高くないと思われますが、「geo冗長」「geoレプリケーション」など複製や同期などで高可用性を実現する「geo-〇〇」という用語の中でよく登場します。
リージョンとは?
データンセンターの地理的な場所を指す言葉が「リージョン」です。
2024年現在、Azureでは世界中に60か所以上のリージョンが存在しており、各リージョンには少なくとも1つ以上のデータセンターが含まれます。「ある地域のデータセンターをグループ化したもの」と言い換えることもできます。
日本の場合、東日本リージョンと西日本リージョンの2つがあります。デンターセンターの住所は非公開ですが、東日本リージョンのデータセンターは東京、埼玉に、西日本リージョンのデータセンターは大阪にあります。リージョン内のデータセンターは遅延の少ない専用ネットワークで接続されています。
仮想マシンなどのAzureリソースを作成する場合、グローバル扱いの一部サービスを除き、リージョンをどこにするのか選択します。
リージョンペアとは?
各リージョンは同じジオ内の別のリージョンとペアになっており、これを「リージョンペア」と呼びます。
ペアとなる2つのリージョン間は極力480km(300マイル)以上離れて構成されるようになっており、リージョン間でバックアップを用意することで、災害などのリージョン規模での障害の影響を最小限にして、サービスを継続できるような構成になっています。
また、Azureの計画的なメンテナンスもペアの片方ずつ実行されるようになっており、同時にその影響を受けないように設計されています。
日本の場合は、東日本リージョンと西日本リージョンがペアになっています。ペアは利用者が指定できるものではありません。
リージョンペアは、リージョン規模の障害の対策と覚えておきましょう。
リージョン選びのポイント
日本でAzureを利用する場合、東日本リージョンか西日本リージョンを選択することが多いと思いますが、リージョンを選ぶポイントとして次の3点があります。
- 応答速度
- 価格
- 対応サービス
まず応答速度ですが、一般的には地理的に近いほうがレスポイントが早く、高速に利用できます。
日本国内で利用する場合は、基本的には西日本の利用者は西日本リージョン、東日本の利用者は東日本リージョンを利用するのが望ましいですが、後述のポイントも重要です。
次に価格ですが、リージョンごとに異なる価格設定になっています。
日本では東西で同じ価格のサービスもあるのですが、一部サービスはどちらか一方のほうが価格が高く設定されていることもあります。利用するサービスの価格をチェックして比較してみましょう。
また、この価格設定はその地域の物価などを配慮して設定されているそうなので、地理的にも比較的近い東アジア、東南アジアなども選択肢にいれても良いかもしれません。
最後に、対応サービスについてですが、特定のリージョンでしか利用できない機能やサービスがあります。(個人的にはこれが最も重要だと思っています)
新しいサービスは先に東日本リージョンに提供され、後追いする形で西日本リージョンでも提供されるケースが多いので、利用可能なサービスの範囲という観点では、東日本リージョンを選択しておくのがよいでしょう。(利用したいサービスや要件を満たすために東日本リージョンを選択する場合が多いです)
次の解説する「可用性ゾーン」も現時点では東日本リージョンでのみサポートされています。
いま流行りの「Azure OpenAI Service」も日本では現時点で東日本リージョンのみがサポートされています。
可用性を高めるための仕組み
可用性ゾーンとは?
可用性ゾーンは、リージョン内のデータセンター規模の障害があっても別のデータセンターでサービスを継続するための仕組みです(リージョンペアの範囲を小さくしたようなものです)
各リージョンには少なくとも1つ以上のデータセンターが含まれる点を述べましたが、このデータセンターがもし2つ以上存在していても、ある一か所に集まっているとその地域の災害や停電の影響をまとめて受ける可能性があります。
そこで考えられたのが可用性ゾーンです。ゾーンは、リージョン内の一意の物理的な場所を表す言葉です。単一のデータセンターの建物のことだと思って頂いても構いません。
1つのリージョンの中では、数km~数十km離れた3つ以上の可用性ゾーン(データセンター)で構成されます。それぞれ物理的に分離されたデータセンターで構成されるため、電源や冷却装置、ネットワークなども独立して提供されます。
つまり、ゾーンを跨いでサーバを設置したりデータをバックアップすることで、その地域の災害やデータセンター規模の障害から保護することができるわけです。
可用性ゾーンはすべてのリージョンで提供されているわけではありません。日本の場合、東日本リージョンは対応していますが、西日本リージョンは2024年7月現在は未対応です。ただし、西日本リージョンも将来的にサポートされることがMicrosoftから発表されています。
可用性ゾーンは、データセンター規模の障害の対策と覚えておきましょう。
可用性セットとは?
可用性セットとは、仮想マシンをグルーピングして障害やメンテナンスによる影響を最小限にするための仕組みです。可用性ゾーンと違い、すべてのリージョンで利用できます。
同じ可用性セットに配置された仮想マシンは、ハードウェア障害や計画メンテナンス(更新プログラムの適用)があっても同時にはダウンしないような仕組みになっています。
特定のサーバラックに偏らないよう分散して配置する設定を「障害ドメイン」、更新プログラムの適用順序を制御する設定を「更新ドメイン」と呼びます。
障害ドメイン
電源やネットワーク機器を共有する範囲(= サーバラック)
更新ドメイン
更新プログラムを同時に適用する範囲
障害ドメインが0、1、0、1… 更新ドメインが0、1、2、3… といったようにドメイン番号が分散して割り振られる形となります。
可用性セットの概念を表すと次のようになります。
障害ドメインは物理的なサーバラック、更新ドメインは論理的なグループです。
可用性セットはあくまでデータセンター内の高可用性の手段なので、データセンター規模の障害には耐えることができません(可用性ゾーンによる分散が必要です)
可用性セットは、データセンター内のラック単位の障害、または、更新プログラム適用による再起動の対応策と覚えておきましょう。
特殊なリージョン
ソブリンリージョンとは?
Azureには、コンプライアンスまたは法的な目的に合致したアプリケーションを構築する場合に使用できる特別なクラウド環境(リージョン)があります。これを「ソブリンリージョン」と呼びます。ソブリン(Sovereign )は「主権を有する」「独立した」という意味です。
ソブリンリージョンには次の2つがあります。
- Azure Government
- Azure China
Azure Government
Azure Governmentは、米国政府向けのリージョンです。
米国政府のコンプライアンスとセキュリティの要件を満たすために特別に構築されたクラウド環境です。米国の連邦政府、州政府、地方自治体およびそのパートナーのみが利用できます。
Azure China
Azure Chinaは、中国向けのリージョンです。
中国では、国外のクラウド事業者が中国にデータセンターを所有したり運用することは基本的に認められていないため、Azure Chinaは「21Vianet」という中国のサービスプロバイダーによって運営されています。
日本を含む通常のグローバルなAzureリージョンはMicrosoftによって運営されていますが、中国のリージョンはグローバルなAzureリージョンからは独立して21Vianetによって運営されているということです。
このリージョンを使用するには21Vianetと契約する必要があり、支払い方法やリージョン間の接続において中国独自の条件などが含まれています。
まとめ
今回はAzureのデータセンター用語について解説しました。
日本を例に図解でまとめるとこんなイメージです。日本の場合、リージョンが2つしかないので、ジオもリージョンペアも2つのリージョンを指しますが、例えばジオ内に4つのリージョンがあれば、2組のリージョンペアが成立します。ジオごとのペア詳細は公式ドキュメントで確認できます。
用語のおさらいです。どの範囲の障害対策になるのか?を合わせて覚えておきましょう。
用語 | 意味 | どんな障害の対策? |
---|---|---|
ジオ(goe) | 国や地域。リージョンをグループ化したもの | – |
リージョン | データセンターの地理的な場所 | – |
リージョンペア | ジオ内の2組のリージョン | リージョン障害 |
可用性ゾーン | リージョン内で分離された3つ以上のデータセンターの集合 | データセンター障害 |
可用性セット | データセンター内の仮想マシンの配置設定 | データセンター内の物理障害 計画メンテナンス |
ソブリンリージョン | データの場所や政府の規制に準拠するための特殊なクラウド環境(リージョン) | – |